「自分をおでんの具にたとえて自己アピールしてください」
こうしたことを言われるのが就職活動の面接の場であり、私は自称“牛スジ“として、 「噛めば噛むほどいい味出します。ぜひ私を食べてみてください!」 と、捨て身のアタックをしたにもかかわらず落とされたものだ。 このようなことを繰り返してせっかく入った会社を辞めた。 帰国したら何らかの方法でまた金を稼がなければならない。 ********** このおでんのたとえ、言われたときには馬鹿馬鹿しいと思ったが、会社員とはそのようなものかもしれない。 会社が大根になれと言えば大根になり、卵になれと言えば卵として頑張る。 会社という大鍋の中で社員という具が揺られ、できたおでんを客に売る。 鍋の中でいい味を出して生き生きとしている人もいれば、ダシをしぼりとられるだけの人もいる。 定年まで煮崩れしない人もいれば、早くから崩れて汁に溶けきる人もいる。 私は前者として美味いおでんを作りたかったが、後者に傾き息苦しかった。 帰国後再び“牛スジ“となり今度こそいい味を出すか、“牛スジ“にならなくてすむ方法を見つけるかーー。 まだ腹をくくれていない。 だから、当初は2月の予定だった帰国を延期することにした。 次にどうするか決めないと、帰れない。 ********** 捨て身になれば、方法は無限にあるのだろう。 極端に言えば、働かなくても生きていくことはできる。 『スエロは洞窟で暮らすことにした』(紀伊國屋書店)というノンフィクションでは、アメリカ人の男性がいっさいの金を棄てて生きていく様子が描かれていた。 また、会社員だけが職業ではないと旅の間に出会った人々から教わった。 派遣社員として働く人も、アルバイトをしながら専門誌を作っている人もいた。 NGOの職員も、役者も、パフォーマーもいた。 旅に出れば学歴や正社員としてのキャリアよりも、トイレットペーパー一巻きのほうがよほど役に立つ。 世辞や遠慮も邪魔なだけだ。 シンプルに自己主張しないと、バスのチケット一つすらとれない。 しかし私が会社員に戻るならば、クソの役にも立たないと知っている学歴や職歴にすがることになるだろう。 私の持ち物はそれしかないからだ……。 ********** 結局、旅に出ても私は変われなかった。 会社組織というものへの疑問も、上司に言われた「うまくやれ」「空気を読め」という言葉へのトラウマも、納得がいかない気持ちも、出国前と同じだ。 かといって、会社員以外の道を拓く自信も未だない。 しかし、進む道ははっきりしてきたような気もする。 ストッキングの伝線や「うまくやれているか」を気にしながら働くなんて、きっと私にはもうできない。 帰国までの残りの日々、「旅」という最も愛する時間のなかで、次に進む覚悟を決めたい。 (アルゼンチン、エル・チャルテン;トレッキングコースから虹が見えた) にほんブログ村
by red-travel
| 2017-01-31 13:34
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