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私と旅と本

家を出たときは3冊だった本が、
……今は12冊になっている。
ああ、私は大馬鹿者だ。

読み終わった本はその都度処分したりゲストハウスに寄付したりしているので、単純に9冊増えたわけではない。
今読んでいるベトナム人作家バオ・ニンの『戦争の悲しみ』は、旅に出てから20冊目だ。

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バックパッカーにとって荷物の重さが命取りだということは重々承知していて、私も日々荷物の軽量化を心がけている。
シャンプーがなくなったときには、新しく買うと重いと思って試しに石鹸で髪を洗ったくらいだ。
(が、あまりに頭がごわごわするので結局買った。)

さらに言い訳すると、新しく手に入れた本の半分は英語のペーパーバック。
かさばるが日本の文庫より軽い。

おっ、なんだやっぱり英語できるんじゃないかと思われるかもしれないが、真実はいつも一つで本当に読めない。
いちいち単語を調べていてはいつまでたっても進まないので、知っている単語だけ追って読んでいると、『シッダールタ』ではいつのまにか子どもができていて、『グレートギャツビー』では葬式が始まってたりして面食らった。

長時間英語を眺めていても苦痛じゃなくなったことだけは、進歩と思いたいのだが……。

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そうして日々、カフェやゲストハウスで読書に勤しんでいて、海外に出る意味があったのかと思うときもあるんだけれど、たぶん、海外でしかできない読書もある。

アウンサンスーチーの著作や、ベトナム戦争について書かれた本など、まさにその地にいて街の風景を眺めながら読み進めると実感が伴って、ますます本にもその国にも興味が湧いてくるのである。

私と旅と本_b0369126_198106.jpg

(ホーチミン;右手にはBook Cafe、左手には本屋が並ぶ夢のような通り)

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# by red-travel | 2016-07-27 19:16 | 読書ノート

ミャンマー、パゴダの怪 その2 グラサン僧侶

東南アジアでは、観光地で騙されるとかぼったくられるとか、そういうことはよくある。
ミャンマーでは寺院で強引にガイドし、最後に「プレゼントをくれないか」という口実でガイド料をとるのが手口のよう。

これに2回ひっかかった。
英語や日本語で説明してくれて、自分では気づかないところまで見せてくれたりするので、まあいいんだけれど……。

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ヤンゴン、巨大寝仏が有名なチャウッターヂーパヤーでのこと。

入り口から続く階段を上っていると、サングラスをかけた男がカタコトの日本語で声をかけてきた。
日本で3年間修行した僧侶だという。

すでに他のパゴダで「プレゼント作戦」にひっかかっているため、まず申し述べておく。

「あー、私、あんまりお金持ってないんですよ。悪いけど……」

すると、

「ダイジョブ、ぼくガイド。キモチ、キモチ」

そう言ってライセンスらしいものを見せてきて離れない。
なんだかんだでこっちもつい仏像や展示物について質問しちゃったりして、木造の僧院や女性的な顔が艶かしい寝仏を彼に従い見て回った。

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ミャンマーでは、生まれた日の曜日によって、ネズミや象やライオンなど、異なる動物が祀られている。
私の曜日のコーナーで仏像に水をかけて家族の健康を祈った後、彼はいきなり私の手をとり、手相占いを始めた。

「ダイジョブだ、大きな問題はない」

「キミは32歳までに結婚して、子どもが2人できる。次に付き合う人と結婚する。木曜日か金曜日生まれの人がいい」
なんてこった、次で終わりか。若者らしく遊んでおくんだった。

「血(おそらく月経)のことも女性だから辛いけど、薬飲めばダイジョウブ」
おお、そんなことまで。でもオッサンに言われたくない。

「キミを助けてくれる人が現れても、自分で拒絶してしまっている。自分が一番エライと思わずに、他の人の言うこと聞きなさい」
……そうかあ、そうかもな。

最後にじいさん僧侶の前に連れて行かれ、じいさんのひざに頭をあずけろと言うのでそうすると、何事かをつぶやいた後につむじをぐりっと押された。

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パゴダを出ると、

「案内したからプレゼントちょうだい」

やはりきたか。
仕方ない、面白いもの見せてもらったからと思って、数枚札を出した。
すると、

「スクナイ」

あ?

「スクナイ、1万チャットないの」
「ない、もうない」
「ドルはないの」
「ない、本当にない」

もちろん普段の財布とは別に、高額紙幣もドルも持っている。
が、彼が要求した額は宿代1泊分もしくは5、6食分に相当する額だ。
少しでも節約しようとタクシーを使わず歩いたりしている身としては、容易に出してやる気にはなれない。

気付いたら、子どものような口調で叫んでいた。

「でも、最初にお金ないって言った!!」

他の僧侶の目が気になったのか、わかった、もう行けというようなことを言われた。

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宿に戻る道中イライラしながら考えた。

よくわからんじいさんに女盛りの私の頭を触らせてやったんだから、こっちが金をもらってもいいんじゃないか。
そもそも僧侶が寄付金に文句つけるとは何事か、この不信心者!

今後グラサン男も僧侶も一切信用しないし拒絶する。
なぜなら旅の責任者も決定権者も私であって、私が一番エライから!

日本人的発想なのかもしれないが、しばらく怒りがおさまらなかった。
旅に出たら柔軟になるというけれど、私の場合ますます頑なになってゆくのであった。

ミャンマー、パゴダの怪  その2  グラサン僧侶_b0369126_23491043.jpg

(ヤンゴン;雨のダウンタウン)

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# by red-travel | 2016-07-24 00:03 | 東南アジア・インド

ミャンマー、パゴダの怪 その1 謎の金星人たち

ある物体を空間の中に配置することによって、場と人の関係性に変化を与えるというのが現代アートの一つの目的だとしたら、まさにそれ。

東京ディズニーランドは日本にいながら外国気分を味わえるが、ミャンマーのパゴダは地球にいながらにして他の星にいる気分。

ダイヤ、ルビー、そして金。
金、金、金、とにかく金。

百聞は一見に如かず。
めくるめく金星旅行をお楽しみください。

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ヤンゴンの聖地、シュエダゴォンパゴダ。
エスカレーターを上り、セキュリティチェックを受け、一歩踏み出すとそこは異世界。

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大きなライオンがお出迎え。
パゴダのライオンとフリーダ・カーロとイモトアヤコには、何らかの深い繋がりがあるのではないかと私はにらんでいる。

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後光が電飾。

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マンダレー、Ein Daw Yar パゴダ。
仏教説話の像が充実。

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よく見よ!弟子の中に金星人が混じっている。

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おおお、巨大カラスに食われるぞ。

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再びシュエダゴオンパゴダ。
同じデザインの変なおじさんは他のパゴダにもいた。

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どのパゴダにも大勢の人が集まっていて、熱心に参拝したり、仏像の前でごろ寝したり、洗濯物干したり、勝手にガイドしてガイド料とったりしている。

パゴダはミャンマーの人々の生活の場なのだ。

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# by red-travel | 2016-07-23 23:21 | 東南アジア・インド

東南アジアのバイク事情

横断歩道を渡るときには

「渡るぞ、私は渡るぞ」

と主張するのが肝要だと中国で学んだので、東南アジアでもそれを実行しようと試みた。
ところが、相手(バイク)も同様に

「通るぞ、俺は通り抜けるぞ」

と思っており、絶対に引かない。

お互い引かなかった場合死ぬのは私だ。
「歩行者優先」が常識じゃないなんてショックだ。

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ミャンマーのマンダレーではバイクタクシーが主流で、値段も四輪車の2分の1から3分の1程度。
宿からバスターミナルに向かうために止むを得ずバイクタクシーに乗った際には、頼むからスピード出さないでくれ、私は慣れていないんだと運転手に懇願したが、

「ハハハ、怖がるな」

と言いながらびゅんびゅん飛ばす。

道に転がってるネズミの死体が急に現実味を帯びて思い出されてくる。
ミャンマーは生と死が隣り合わせに存在する国だと書かれているエッセイを読んだが、こういうことかと理解した。

ああ、こんなスピード狂のオヤジのバイクで死にたくない!
祈るような思いで十数分を耐えた。

ヤンゴンではバイクによるテロだか犯罪だかがあったようで、それ以後バイクは禁止されたのだとか。
マンダレーでも禁止せんかい!

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ツアー会社のベトナム人ガイドによると、ホーチミンの人口は約1,000万人、バイクの台数は600万台だそうだ。

ベトナムではしばしば、携帯電話を操作したり電話したりしながらバイクに乗っている奴を見かけた。
「走りスマホ」だ。おそろしい。

奴らは歩道にも平気で乗り上げてくるし、車線なんてあってなきがごとし。
車も同様で、停車している車の前で道路がすくのを待っていると、その車が発進してぶつかってきた。
また、暴走バイクを間一髪で避けて呆然としていると、他のバイクタクシーに笑われたこともある。

このやろふざけんな、と会社を辞めて以来久々に思った。

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中国ではルールの範囲内で最大限暴走という印象だったが、東南アジアではルールとは何ぞや?と前提があやしい。

今日も道を渡るタイミングがつかめなくて立ち往生していると、

「ヘイ、どこに行きたいんだ?」

と新たにやって来たバイクタクシーに声をかけられた。

邪魔だ、邪魔だ。
思わず叫びそうになる。

道路の向こう側、ほんの2メートル先に行きたいだけなんだよっ!!

東南アジアのバイク事情_b0369126_21313064.jpg

(タイ;チェンマイの寺院にて。混雑する道路を前に、余裕の表情)

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# by red-travel | 2016-07-23 21:41 | 東南アジア・インド

取り返しのつかない……

初めに言っておく。
またまた沢木耕太郎の話をするので、もう聞き飽きたという方にはゴメンナサイ。

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いきなり余談だが、しばらく前に大手町の丸善での沢木耕太郎のサイン会に行った。
その日はめずらしく化粧直しをし、普段は省略するマスカラをつけ、髪型なんかも気にしたりして、我ながら恋する少女のようであった。

思い返すと、沢木耕太郎に直接会えたことは、退職と世界一周に向けて背中を押してくれた要素の一つだった。
といっても何か話をしたわけではなく、本人を前にしてあがってしまい、握手してくださいと言うのが精一杯だった。

『深夜特急』の旅から何十年も経っているのに全然年齢を感じさせず、ああこの人があの旅をして、『テロルの決算』や『危機の宰相』を著し、ノンフィクションの手法を考えに考え続けた人か……と、本の書き手と生身の人間がカチッと符合した。

精神も肉体も引き締まっているという印象。
人として本当に格好良くて、涙が出そうになった。
どんなに憧れても憧れきれない。

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その沢木耕太郎が、エッセイの中で、『深夜特急』の旅は「取り返しのつかない旅」だったと述べている。
一世一代の旅、もうそんな旅は二度とできない旅という意味だ。

この「取り返しのつかない」という言葉のニュアンスは、私が今回の旅に求めていたものだった。
ガンジス川を見て人生変えようとは思ってない(と言いつつ行くつもりだ)けれど、外国のわけのわからない何かを見て聞いて感じて、打ちのめされたいと思っていた。

しかし、旅に出て2か月半が過ぎた今、空港に降り立っても国境を越えても、

「よし、中心部への行き方を聞いて、あれしてこれして水も買っとこう」

といった具合に妙に落ち着いてしまって、新鮮な感動も興奮もない。
町を歩いていても、ええーこんなことってあるの、やっぱり外国は違うなあと驚くことがないのだ。

韓国や台湾へのショートトリップを含めると、今回は9回目の海外旅行。
旅に慣れすぎてしまったのだろうか。

今思えばちょうど10年前、ボランティアプログラムでチェコの田舎町に行ったのが、私にとっての「取り返しのつかない旅」だったのかもしれない。

初めて見る外国の何もかもが珍しく、そして交通もユースホステルも、ぶつかるもの全てのルールがわからず少し怖かった。
自分だけ英語が話せない疎外感も味わった。
それだけに、無事日本に帰った後の達成感は大きかった。
そして、実際は色んな人に助けてもらったのだが、ともかく外国に一人で行って何とかなったという自信もついた。

もうそのときのような、凹凸の激しい旅はできないのだろうか。

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が、社会人として働き、ここ数年はいろいろと悩んだ末今の自分になったからこそ、じわじわと打たれることはある。

それは東南アジアの博物館で思いがけずその国と日本との関わり(多くが「日本の軍国主義」への抵抗)を目にしたり、日本人なら大学生くらいの若者がバイクタクシーやゲストハウスで働いているのを見たときだったりする。
かつての自分は観光地に着くだけで興奮して、その国の歴史や日本との関係、そして今を生きる人々の生活に対して興味を持っていなかった。

「取り返しのつかない旅」をするにはもう取り返しがつかないのかもしれない。
こうなったらもう、今だからこそ感じられるものを一つでも多く拾うしかない。

あー暑い暑い無理したくない、近くのカフェでゆっくり本読もっかな、
と思ってないで歩け、
私!

取り返しのつかない……_b0369126_1939202.jpg

(ミャンマー-タイ国境の橋;夜行バスで早朝に到着)

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# by red-travel | 2016-07-23 19:47 | 旅について